いせえびの麻雀備忘録

天鳳七段。豆鳳凰民のいせえびが、雀荘や麻雀本のレビューなどをしています。

【本】無敵の人第四話感想―今後の"読み"描写の方向性が垣間見えた一話

第四話の簡単なあらすじ―トップになるも、大ピンチ!?

 相手の癖(ヘキ)を利用して独走するM。気がついたら60000点オーバーの大トップでオーラスに。

 しかし、ここで相手に四順目国士テンパイという大逆転手が入る

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                親切丁寧な解説

 Mからの直撃なら逆転されてしまうという状況。はたしてMはどうやって国士を回避するのか……。

(かなりざっくりとしたあらすじなので、実際に読むことを強くおすすめします)

感想―"読み"の解説をバッサリ切り捨てるという英断

 前回の感想で、Mの"読み"に再び解説が入るかどうかが一つの見どころになるということを書いた。

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 今回の展開で、Mは癖を利用したことは告げたものの、その内容を明かさなかった。そしておそらく、今後もMの読みが具体的に解説されることはほとんどないのではないのかと思われる。

 前回も触れたが、これは週刊少年マガジンという媒体であることを考えたら仕方のないことだと言える。毎回解説が入ってもくどくなるだけだし、どれだけ理詰めで書いても、書けば書くほど無理が出てきてしまうからだ。

 無理が出てしまうというのは、読みによって相手の手全てを当てることなどできないという身も蓋もない理由による。限定的な状況ならともかく、毎回読みきることなどはできない。仮にイーシャンテンの形を完璧に読めていたとしても、入り目が分からなければリーチの待ちなどわからない。

 そのため、無茶な理屈を立てようとするのではなく、"いっそ説明しない"というのは良い回答だと思う。一読者としては、「"相手がネト麻勢の時、ユーザー名がわかれば相手の手をすべて読める"という能力を持った少年が主人公の麻雀漫画」というスタンスでいきたい。(こう考えると、「ユーザー名を隠した相手に対し、なんとか暴こうとするM」といった展開もありうる…!?)

今後の見どころ―Mは何を根拠にアタり牌を止める?

 次回では、国士のアタり牌を掴んでしまったMが何を根拠としてそれを止めるかが見どころとなる。(もちろん、止めなければ『無敵の人』が終わってしまうので、止めるという前提で)

 

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                   Mが振り込んだ場合

 今回の展開でポイントなるのが、四順目国士テンパイという超レアケースであること。過去の牌譜から癖を見破っているというMの設定からしたら、さすがにこのケースでは癖を読んでの一点読みができないものと思われる。

 そこで、Mが癖を使わずにどうやってアタり牌を止めるかが問題となる。

 具体的に挙げると、

①サインを見破っている

②脇二人の反応から西がアタりだと察する

 といった方法である。

 ①の場合、「どういうサインを出すことでどんな情報が送られるか」といった通しの具体的な内容について言及することになる。しかし、通しに関する描写が少ないことからこの展開は可能性が低いと思われる。

 ②は、『天』で"反射"として紹介されていたものである。通常の場合はまず行えないこの"反射"。しかし、今回の場合は通しによって脇二人がテンパイ者の待ちを知っているという特殊なケースである。しかも、ご丁寧にキレ強打までしてくれている

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             青筋立てて西を切る六段

 これに続いてもう一人の六段も西をキレ強打。記憶力・観察力にかけては天才のMのことだから、この異常さに気がついて西を止めるのではないだろうか。

 相変わらず展開が速く見どころも多い『無敵の人』。第五話は1月27日発売の週刊少年マガジンにて掲載予定

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【本】『無敵の人』第三話感想―通しの解説がない……だと……?

第三話の簡単なあらすじ―三対一となるも格の違いを見せつけるM

 通しを使う三人組相手とネット生中継の下で対局することとなったM。もしもMが敗ければ、その無敗はイカサマによるものだったと公表されることとなる。こうしてMにとって圧倒的に不利な状況での対局が始まった。

 三人組は通しを使ってキー牌を鳴かせ合うことで、簡単に和了を拾う。三人がアガる中、Mはアガれず気づいたらラスに。

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             全国中継で煽りまくるど畜生

 

 しかし、Mはただやられていたわけではなかった。Mは序盤の打ち方をチェックすることで相手のユーザー名が本当のものか見極めていたのだ。そして、Mの逆襲が始まった……。

(かなりざっくりとしたあらすじなので、実際に読むことを強くおすすめします)

感想―通しの説明はなく、かなりスピーディーな展開

 前回の感想で、相手の通しがどのようなタイプのもので、Mがいかにしてそれを逆手に取るかが見どころになるだろうと予想していた。

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 しかし、予想に反して通しの具体的な描写はなかった。具体的なサインの説明はないものの、詳細な手牌の情報が伝わっているという福本方式だった。

 正直この点はかなり意外だった。心理戦の描写が大得意の甲斐谷先生のことだから、この絶好の機会に真骨頂を見せてくれるものだろうと期待していたからだ。

 おそらく、麻雀を知らない少年読者の多いマガジンという媒体であることや、まだ三話目でありスピーディーでわかりやすい展開が求められるという事情に配慮したものと思われる。

今後の見どころ―Mの"読み"の解説は再び入るのか?

 今回、Mは相手の癖(ヘキ)からその手牌を完全に読み取り、そのアガりを封殺した。だが、そこで第一話のような牌理に基づいた"読み"の解説が入ることはなかった。

 解説の省略は少年読者への配慮や作劇のテンボを意識したものと思うが、それが今後も続くのかどうかが気になるところ。練り込んだ闘牌を見どころとする本格麻雀漫画の路線を行くか、少年漫画向けにアレンジして闘牌描写はライトにするのか。

 Mの"読み"は再び解説されるのか。今後の方向性を大きく決定づけるポイントとなるので注目したい。

 

↓(一部界隈で)汎用性の高そうな煽り画像

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【本】『無敵の人』第二話感想―麻雀漫画ファンなら絶対に見逃せない"通し"の見どころを徹底解説

第二話の簡単なあらすじ―三対一に追い込まれた「M」

 順平は「M」ことミズキの強さが不正ではなく本物であることを証明するため、ミズキがネット麻雀「鳳仙」でプレイしている動画を撮影してブイラインの社員に見せることにした。しかし、ミズキがMであることは認められたものの、見えないところで不正をしている可能性があるとして、ミズキの疑いが晴れることはなかった

 そこで、「Mの実力が本物であることを証明するため」として、スタジオで生中継しながらリアル麻雀を打つことを提案される。

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 この提案を受け入れた順平だったが、もちろんこの話には裏があった。

 相手の三人はグルで、通しを使ってMを陥れようとする策略だったのである。こうして、三対一という圧倒的に不利な状況下でMは対局をすることになった…。

(かなりざっくりとしたあらすじなので、実際に読むことを強くおすすめします)

今後の見どころ―いかにして通しを逆手に取るか

 前回の感想で、「いかにしてMが"必勝の理"を積み上げていくかが見どころになる」ことを述べた。そのため、今後は以下のような展開があるだろうと予想していた。

一つの解決策として、特殊な状況下での対局を増やすというものが思いつく。これは、特殊ルールを採用した麻雀や、なんらかの縛りを受けての対局や、相手がイカサマをしている状況など、通常の麻雀と異なる状況での勝負を作中で増やすというものである。この場合、通常の麻雀に比べて不確定要素を減らすことが可能になる上、漫画としてのハッタリも効かせやすくなる。

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 そして、実際にMは"通しを使った三対一"という状況で戦うこととなった。作者がこういう展開にしたということは、緻密な読みによって相手の手を看破して利用するという"必勝の理"をすでに用意していると考えられる。今後の展開に期待できるところ。

 そこで、次回以降の見どころとしては、Mがいかにして通しを逆手に取るかという点が中心となる。

 だが、麻雀漫画ファンとしては、この"通し"についてもっと突っ込んで注目したいところが三つある

それは、

 

どうやって通すのか

何を通すのか

③看破した情報をどう利用するのか

 

という三つである。

見どころ①「どうやって通す?」

 "通し"と一言にいってもその種類はたくさんある。言葉を使ったチクローズや、指で伝える指ローズ、また舞台装置や電子機器を使ったものまである。麻雀漫画では、敵コンビがどんな通しを使っているかがよく見どころになる。

 通しとしてよく出てくるものを大別すると、大きく言葉系、動作系、その他(舞台装置・道具等)に分けられる。

 

●言葉系

・台詞の一文字目(水戸兄弟が使い、安永が見破る『むこうぶち』)

・同じく台詞の一文字目(敵コンビが使うものを桜井章一が見破る『雀鬼』)

●動作系

・リー棒の置き方(仲井戦にて使われアカギが意趣返しをする『アカギ』)

・指の本数で点数を教える(通しと言うほどでもないが、さるとよろずが使用『フリー雀荘最強伝説 萬』)

・切るまでの秒数(老人コンビが使用『哲也』)

●その他

・モスキート音(壁役(覗き役)と合わせて手を通される『HERO』)

・特殊な部屋による覗き(傀がタバコの煙を使って阻止する『むこうぶち』)

・同じく特殊な部屋による覗き(モールス信号と合わせて手を通される。麻雀漫画ではないが、Vシネ『雀鬼』)

 

 ぱっと思いつくだけでこれだけあるので、掘り起こせばかなりのパターンがあることと思う。

 こうした中で、『無敵の人』で使われるのは動作系の通しではないだろうか。

 今回は対局の様子をネットで生中継ということなので、対局中にべらべらしゃべりだす言葉系や、何かしらの装置を必要とする通しは使えないものと考えられる。そうした時、自然に使えるのは動作系の通しということになる。

 さらに、通しに用いる動作は見られていても自然な動きである必要がある。露骨な指ローズは姿勢によるサインは見ている人にバレバレとなるので使用できない。

 こうした制約を考えると、考えられる方法として理牌を用いた通しがある。理牌は対局中にしていても自然な動きであるため、「牌をn枚まとめてこちらに動かしたら~」といった通しを行うことが出来る。これは一案だが、「麻雀中にしていても自然な動作」の中にサインを混ぜるという方針である可能性は高いと思われる。

 また、通しの方法を考えるにあたり絶対に見過ごせないのが、起点となる合図をどうやって送るかである。いくら緻密な通しをあらかじめ決めていても、味方がそれに気づかなかったら意味がない。チクローズの場合は「手の内容を伝える」ことと「通しを送ると気づかせる合図を出す」ことが話すという行為によって同時に行われるため、この問題は発生しない。

 しかし、動作系の通しの場合、その動作を行う前に「これから通しを送りますよ」という合図を出すことが必要となる。麻雀では自分の手や捨て牌、相手の手出しツモ切りなど注意して見るべき箇所が多い。さらに、今回は三人がグルとなっているため、サインを受け取るとしたら他二人の動作を常にチェックしている必要が出てくる。そのため、味方が気づきやすい形で合図を送らなければ、せっかくの通しも見逃される可能性が高いのである。

 これについては「それでも常に集中して全員の動作を見続けていれば見逃すことはない」という意見もあるかもしれないが、甲斐谷先生はこの合図問題に回答を用意していると考えられる

 なぜなら、「サインを送る時にはそのメッセージが見過ごされない工夫をしなければならない」という主張は同じ作者の『ONE OUTS』にて行われているからである。同様の主張を引き継ぐなら、今作『無敵の人』においても合図問題は見過ごされないだろう。(なお、『ONE OUTS』では「常にサインを送り続ける」という回答を出した)

 この合図問題については、「リーチ発声の直後に通しを送ると決めておく」や「上や左の牌から離して置いたら通しの合図」のように、あらかじめサインを送るタイミングを決めておいたり、捨て牌を利用するといった解決策が考えられる。だが考えてみると分かるが、違和感なく気づかれない形で合図を送ることは難しい。

 通しの方法とその合図について、甲斐谷先生がどのような答を用意しているかは大きな見どころである。

見どころ②「何を通す?」

 さて、うまいことばれずに通しを送る方法が決まったところで、次に問題となるのが「何の情報を送るか」である。ちょっとした動きによって伝えられる情報量はわずかでしかない。麻雀牌は34種類もあるため、ある特定の牌を指定するだけでも一苦労である。

 伝えられる情報量が限定的である以上、最も効果的な情報について通しを行わなければならない。自分の手牌13枚の情報を送り続けることは不可能だからだ。そう考えると、やはり待ちの情報が良いのではないかと思われる。それにリーチ時に待ちを送るのであれば、リーチの発声やリーチ棒の置き方、置くタイミングなど、通し開始の合図を出しやすいため都合がよい。

 待ち以外で伝えることが有効な情報としては、持っているドラの枚数トイツ持ちの役牌の情報などがあるが、どうしても地味であるし漫画的に見栄えが悪い。他に効果的なのは鳴きたい牌の指定があるが、これは一気に難易度が上がる。かといって、待ちの情報だけでは通しとしてのインパクトが弱いし、相手側の"必勝の策"とまではならない。

 限られた情報しか送れない中、何を通すのが有効であると考えているのか。そこもまた見どころである。

見どころ③「見破ってどう利用する?」

 ここまでは通しを使う側の事情について書いてきたが、本作の主人公は通しを使われる側である。そのため、通しを見破った上で、それを利用しなければならない。福本作品でおなじみの「逆手を取ってねじ上げる」である。

 ここで問題となるのは、「Mがどこまでの情報を得られたら『そりゃ絶対勝てるわ』と読者は納得するか」である。

 なお、あくまでも問題となるのは"納得感"であるというところも注意が必要。その競技の性質上、相手の手牌がすべて見えていたとしても"100%勝つ"のが難しいのが麻雀である。極端な話、鳴くこともアガることもできないまま、二局で他家が飛んで三着終了ということもありうる。そのため、「これを知っていたら確実に勝てるという情報」ではなく、「これだけ知っていたらそりゃ勝つだろうね」と読者が納得できるラインの情報をMが把握するという展開になる。

 そう考えた時、やはり"待ちの情報"だけでは「それなら必勝できそう」というイメージからはほど遠い。そもそも待ちの看破だけなら漫画的なハッタリを加えれば相手の捨て牌のみからでも可能である。せっかく"通し"というギミックを使っている以上、それを利用することで自分の打ちまわしが決定的に有利になるような情報を獲得するに違いない。

 その一つの形としては、"通しの情報"+"Mの超人的な読み"によって手牌・山読みをするというものが考えられる。例えば相手の"待ちの情報"を取得したとしたら、「序盤に3pが捨ててあるのに2-5p待ちということは三トイツ形であった可能性が高くて他の捨て牌から見るとそのトイツは…」といった形で、通しを看破することで手に入れた情報にMの特性である超人的な読みを合わせることで、"必勝"を納得できるほどの情報をMが手に入れるといったものである。これは一例だが、何かしらの形でMがかなりの情報量を得る展開になるのだろう。

 読者が「すげえ!そりゃM勝つわ!」という情報をどうやって手に入れるのか。ここも見逃せないポイントである。

 

 通しについて長々と考察したが、なんといっても『ONE OUTS』や『LIAR GAME』の甲斐谷先生である。予想を超える闘牌を見せてくれるに違いない。

 『無敵の人』掲載のマガジンの次号は1/13発売。必見である。

 

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【本】甲斐谷忍新作麻雀漫画『無敵の人』第一話感想―甲斐谷先生、こんなにガチでいいんですか?

LIAR GAME』の甲斐谷忍が週間少年マガジンに麻雀漫画を新連載!

 2015年12月、麻雀漫画ファンの間に衝撃が走った。

 なんと、週間少年マガジンに麻雀漫画が連載されることになったのだ。マガジンに麻雀漫画が連載されるのは『哲也―雀聖と呼ばれた男』が2004年に連載終了して以来、11年ぶりのこと。週間少年誌全体で見ても、チャンピオンのギャンブル漫画『ギャンブルフィッシュ』で麻雀を題材としたゲームがあったくらいで、麻雀をメインの題材としたものはここ最近存在していなかった。

 しかも、作者は甲斐谷忍。『LIAR GAME(ライアーゲーム)』ONE OUTS(ワンナウツ)』等の名作頭脳戦漫画を輩出してきたヒットメーカーが、麻雀漫画を引っさげて少年漫画の世界に飛び込んできた。それがこの『無敵の人』である。これには期待しないほうが無理というもの。

第一話の簡単なあらすじ

 舞台は麻雀が大流行している現代日本(この設定は咲に通じるものがある)。この世界では「雀仙」というオンライン麻雀サイトが大人気で、その運営会社であるブイラインの社員であることは高い社会的ステータスを意味していた。

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               どう見ても天鳳

 主人公の順平はこのブイラインの掃除バイト。妹と二人の貧乏生活から脱出し、憧れの正社員になりたいと日々思っていた順平は、ある日一攫千金の噂を耳にする。

 それは、「不正行為をしていると思われるプレイヤー"M"の不正の証拠を押さえれば300万円」というものだった。

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            つのはこんなこと言わない

 "M"は320戦無敗という驚異的な記録で雀仙にたどり着いたプレイヤーである。その超人的な記録に対し、他のユーザーは羨望の目を向けるのではなく、「どうせイカサマだろう」と懐疑的だった。そのため、"M"の成績への不信が雀仙自体への不信に繋がることや、"M"から不正の方法が流出することを恐れたブイラインは、その不正行為に対して懸賞金を賭けたのであった。

 順平はこれを絶好のチャンスと捉え、"M"の不正を暴こうと決心する。そして、ブイラインの社長に掛け合い、不正を抑えた暁には正社員への登用を約束させる。

 そんな順平がファミレスでバイトをしていたある日、ノートパソコンで麻雀をしている少年を見つける。その画面を覗きこむと、なんと"M"その人であった。

 順平はなんとか不正を暴くため、友達になろうと少年の家に通いこむ。しかし、"M"の姉からその超人的な強さの理由と悲しい過去を聞かされ、順平は"M"の不正を疑い売ろうとしていた自分の浅ましさに気づかされる。そして、"M"と本当の友達になろうと順平は決意する。

 以上が第一話の簡単なあらすじである。(最新号の内容であるため、核心的な部分には触れないでおく)

感想―「面白いけど、ガチすぎない?」

 まず所見での感想は、「かなり面白いけど、これ麻雀知らない人がついていけるの?」というものだった。

 なにしろ、"読み"が本格的。強引なところはあるものの、ちゃんと理屈を積み重ねた読みをしている。

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              この後、さらに解説は続く

 しかも、このコマを見ても分かる通り、麻雀用語を説明なしにバンバン使う。麻雀のルールを説明するどころか、平気でイーシャンテンや単騎といった用語を使うのだから、一般読者に足並み揃える気がないことが伺える(なお、初期の『咲』ではコマ外で説明があったが、本作品では一切ない)。

 これに関しては、麻雀ファンと一般読者の両方を向くことで中途半端な立ち位置になることを避けたのだと考えられる。例えば、『哲也』の場合は一般読者にウケるように、わかりやすい必殺技やハッタリの効いた演出をして盛り上げるという方向性を選んでいた。一方で、『無敵の人』は第一話からこれでもかと言うほど理詰めで闘牌を書いている。ここらへんの勝ちへの"理"を妥協せずに積み上げていくスタイルはさすが甲斐谷先生といったところ。

 闘牌描写をしっかりしてくれるというのは、麻雀漫画ファンとしてはたまらないところ。しかし、さすがに一般読者すべてを置いてけぼりにしっぱなしというわけにはいかないだろう。

 この点について、作者はインタビューで次のように答えている。

あくまで漫画なので、漫画としてのおもしろいものを描くことが第一。だけど、なまじ麻雀や競馬のおもしろさを知っていると、マニアックに押し過ぎて、意味がわからなくなってしまうことがある。

  そして、だからこそ「基本は少年誌らしく」行くとしている。今後は二人の友情にフォーカスしていくようなので、ストーリーの本線は一般読者にもわかるような友情物を、闘牌部分は麻雀ファンに向けたコアな描写をしていくものではないかと思われる。

今後の見どころ―"必勝の理"をどれだけ作れる?

 個人的な今後の見どころとしては、"必勝の理"をどれだけ作れるかというところにあると思っている。"必勝の理"とは、「こういう理由があるから、こういう選択肢を取れば必ず勝てる」という理屈のことである。

 これまでの作品を見れば分かるように、甲斐谷忍天才が理によって勝ち続けるという作風を得意としている。本作『無敵の人』もその方向性を歩むものと思われる。

 しかし、麻雀において"必勝の理"を組み立てることは非常に難しい。言わずもがななことであるが、麻雀は運の要素が非常に強い。そのため、"かなり確度が高い読み"をすることが可能であったとしても、"必勝=100%"の読みをすることは簡単ではない。両者の差は途方もなく大きい。

 しかも、それをマニアックになり過ぎず、かつ週刊連載という形で展開していかなければならないという制約まである。この制約も非常に大きい。

 一つの解決策として、特殊な状況下での対局を増やすというものが思いつく。これは、特殊ルールを採用した麻雀や、なんらかの縛りを受けての対局や、相手がイカサマをしている状況など、通常の麻雀と異なる状況での勝負を作中で増やすというものである。この場合、通常の麻雀に比べて不確定要素を減らすことが可能になる上、漫画としてのハッタリも効かせやすくなる。

 週刊連載で、一般読者にも楽しめるようにしながら"必勝の理"を組み立てる。ただでさえ難易度の高いことを、厳しい制約下でどうやって成功させるのか。次回以降の期待値も高い、非常に面白い新連載だった。

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【雑記】麻雀打ちのタイプを嗜好によって三つに分類してみた③~"Timmy,Johnny,Spike"の分類はどう役に立つ?~

 前回の続きです。

で、分類して何の役に立つの?

 「ふーん。たしかにカードゲームの性格分類は麻雀にも使えそうだね。で、それで?」

 ここまで読んでそう思った人は多いかもしれない(それなのに読んで頂いてありがとうございます……!)。だが、この分類は麻雀に関する議論をするとき、またゲームとしての麻雀を考える際に非常に重要であると考えている。

  ある集合をその属性によって分類し、定義するということは学問領域のみならずあらゆる場面で行われている。卑近な例では、「リア充」と「非リア」、「草食系男子」と「肉食系男子」といった定義も、特定の集団の考察及び分類によって生じた。また、最近では「意識高い系」や「オタサーの姫」のように、近年特徴的に現れてきた人々を指す新たな言葉も生まれている。

 こうした分類は決して無駄ではない。人々を新たに定義するということは、その人々を発見し、イメージを共有化することである。我々は「リア充」という言葉を発明することにより、「一般化されたリア充像」を基に議論をしたり、「リア充」な人の性質をより深くを考察したり、はたまた「リア充」有効なマーケティングは何かといったことを分析したりすることが可能になる。我々は言葉によって世界を分節する。「語りえぬことを語る」ことは出来ない。そのため、新たな分類の獲得は思考の深化、議論の先鋭化に大きく寄与するものなのである(もちろん、誤った分類や過度な一般化は議論の混乱を招くこともあるが……)。

 では、具体的にどのような場面でこの分類が役に立つのか。それが最も有効に働くのは、ユーザー層の分析が必要な時である。つまり、麻雀に関するビジネスを始めようとする時と言える。

 そもそも"Timmy,Johnny,and Spike"は、ゲーム会社がより良い製品開発のために作られた概念である。より効果的なマーケティングを行うためには、ターゲット層を分析し、よく理解する必要がある。つまり、単なる学術的な概念整理のためではなく、ビジネスのためという実利的な要請から生まれた分類なのである。

 麻雀においてユーザー層の分析が必要となる人として、雀荘経営者麻雀ゲームの開発者のように、麻雀の場を提供するビジネスに関わる人が想定される。特に、勝者に商品を与えない形式で麻雀の場を作ろうとするときは踏み込んだ分析が必要となる。先述したように、麻雀ユーザーはスパイク層が中心を占めている。巷にある雀荘のほとんどがオンレートであることからもそのことが覗える。そのため、彼らにレートという「餌」を与えない場合、代わりに何をしなければいけないかということを考える必要がある。

 例えばノーレート雀荘がスパイク層の取り込みを諦めないのであれば、レート以外の「餌」が必要となる。賞品以外でスパイクの食指を動かすものは名誉であると考えられる。それならば、提供する名誉が果たして本当にスパイクにとって満足のいくものなのか、またスパイク層の戦場と競合した時に勝てるだけの魅力があるのか、ということを十分に考慮した上でサービスを設定しなければならない。極端な話、天鳳ガチ勢を取り込もうと思ったら、天鳳を超える名誉、利便性、快適性を提供しなければいけないということである。

 また、ティミーを主なターゲットとする場合にも同様に考える必要がある。その場合、ゲーム体験それ自体に付加価値をつけていくという方向性が存在する。有名プロと打てたり、独自のルールで打てたりといった試みもこの体験への付加価値付けである。体験への付加価値付けで成功した最好の例は「あきば雀荘てんぱね」だろう(

あきば雀荘『てんぱね-teMpane-』│秋葉原でメイドさんと楽しく麻雀しませんか?

)。

 「てんぱね」は、ノーレートでありながら初回来店料1000円次回以降1500円、さらに東風一回630円という、普通の雀荘では考えられないような値段設定となっている。この強気の値段設定を支えているのは、体験に特化したサービスである。「てんぱね」では、コスプレをした女の子と麻雀が出来る他、「ジョブ」や「スキル」、「装備」といったRPGを模した独自のシステムを採用することにより、他にはない体験が出来る雀荘として好況を博している。実際に、現在の店舗に移った2009年から現在までの6年間もこの業態を維持している。普通のフリー雀荘に通う人から見たら驚異的と言える。しかし、この雀荘がティミーの取り込みに特化したことで成功しているということは紛れもない事実である。

 このように、ターゲットとなるユーザー層の分類はビジネスの方向性考える有効な枠組みとなることが考えられる。

 また、"Timmy,Johnny,and Spike"の分類は、ビジネス以外の場面でも役に立つ。まず、「あの人の言う『流れ論』はティミー的な楽しさを追求するためのものだから、それに対して最新の研究を持ち出して反論するのは筋悪だ」や、「他の人と差別化するためにも、自分はこれからジョニー的な面を打ち出していこう」のように、自他を客観的にポジショニングして整理する道具として使える。また、この概念が浸透すれば「あの人は独特の立ち位置だけど、ジョニーとスパイク両方の面を強く持っているね」と、コミュニケーションを円滑化する道具ともなる。概念の整理は考察や議論を深める役に立つ行為なのである。

 もちろん、"Timmy,Johnny,and Spike"で説明で述べた通り、プレイヤー全てがどれか一つのみに当てはまるというものでもないし、そのどれにも当てはまらない可能性もある(それらの可能性はベン図にて示した)。また、この分類が的外れである可能性はある。

 しかし、こんなにも面白い麻雀というゲームの悪魔的な魅力を考える時、その魅力を分類すると言う行為それ自体は必要不可欠なのではないだろうか。本論ではMTGに存在する"Timmy,Johnny,and Spike"という概念を援用したが、この概念の浸透や、麻雀に特化した新たな"Timmy,Johnny,and Spike"の発明が、この雑文をきっかけになされたら……と夢想するばかりである。

(大鉈を振るい考察を進めた結果、堅苦しくて読みにくい文体となってしまいました……。最後まで読んで頂いた方、本当にありがとうございました<(_ _)>)

(また、本文中にて言及した方々や「てんぱね」につきまして、もし事実誤認等がございましたら直ちに修正致しますので、その時はぜひお申し付けください)

 

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【雑記】麻雀打ちのタイプを嗜好によって三つに分類してみた②~"Timmy,Johnny,Spike"を麻雀に当てはめてみた~

 前回の続きです。

ティミー、ジョニー、スパイクを麻雀に当てはめてみた

1.ティミー

 ティミー的な楽しみとは、麻雀のプレイそれ自体の面白さを味わうものである。毎回異なる配牌をもらい、手役を作り、打点とスピードのバランスを上手く取りつつ他のプレイヤーとの駆け引きを楽しむ……。麻雀にハマった人は例外なくこうしたプレイ自体の魅力に憑りつかれた経験がある。ノーレートでひたすら何時間でも何十時間でも飽きることなく、狂ったように摸打を繰り返した思い出を持つ人は多いのではないだろうか(高校時代、「麻雀合宿」と称してひたすら三泊四日で打ち続けたのが懐かしい……)。

 麻雀におけるティミーには、麻雀アプリやネット麻雀、またはノーレートのセットを度々囲んで楽しむといったカジュアルプレイヤーが当てはまる。戦術の探求や一回一回の勝敗への関心は(スパイクに比べ)少なく、もっぱらゲームの過程を楽しむプレイヤーである。

2.ジョニー

 ジョニー的な楽しみとは、新セオリーの発見や独自の麻雀理論を構築・表現することに快感を得るものである。研究者的、パイオニア的な楽しみ方と言ってもいい。麻雀の戦術は近年急速に洗練されてきており、現在と10年前、さらには20年前とではセオリーが全然違っている。そのような変革には、実験と研究を重ね、理論の構築を固めてきたジョニーが大きく貢献してきた。

 麻雀におけるジョニーとは、麻雀というゲームそれ自体の研究への関心が強い人々である。具体的には、麻雀の数理的研究の先駆者である『科学する麻雀』のとつげき東北氏、高度に理論化された戦術論をいち早くネットに公開していた『現代麻雀技術論』のネマタ氏、現在の麻雀研究の最先端を走る『統計で勝つ麻雀』のみーにん氏が当てはまるものと考えている。また、数理研究はしていないものの、尖った戦略観による独自の理論を構築している『黒いデジタル麻雀』の石橋プロや自分の打ち筋をデータと合わせて体系化した『神速の麻雀』の堀内正人氏もジョニー的な性格が強いのではないかと思う。(※これらは完全に私見です!)

3.スパイク

 スパイク的な楽しみとは、麻雀に勝利することによって得られる名誉や賞品の獲得を追い求めることである。通常、麻雀には何かが賭かっていることが多い。天鳳ならRやポイントが、プロのリーグ戦ならタイトルが、フリー雀荘なら……。こうした「勝利に付随する何か」に価値を置く人はとても多いため、麻雀打ちの多くがこのスパイクに分類されるものと思われる。

 麻雀におけるスパイクには、オンレートで打つ人ネット麻雀で高段位を目指す人プロ団体に所属している人などが挙げられる。さきほど「ジョニーは麻雀研究への関心が強い」ということを述べたが、スパイクの人々が麻雀研究に興味がないということは意味しない。むしろ、最新の戦術に関する情報収集、自身の戦略の洗練化を貪欲に求めている。だが、あくまでそれらは「自分が勝ち続ける」ことへの関心から生じるものである。自ら研究を進めて新理論の構築・発表するという動機の強弱によって「ジョニー」と「研究熱心なスパイク」とは区別される。

(ちなみに、私はティミー⇒ジョニー⇒ジョニー寄りのスパイクへと変遷してきたと自覚している)

 それでは、長々と説明してきたけれどこのような分類が果たして何の役に立つのか。概念を整理する意義とはなんなのか。次はそのことについて説明する。

 

 (以下は麻雀ファンにとって垂涎ものの名著ばかり!読んだことのない人はぜひ読んでみてください!)

科学する麻雀 (講談社現代新書)

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統計で勝つ麻雀 (近代麻雀戦術シリーズ)

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黒いデジタル麻雀 ?現代流データ戦術を斬る? (マイナビ麻雀BOOKS)

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神速の麻雀 堀内システム51

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【雑記】麻雀打ちのタイプを嗜好によって三つに分類してみた①~MTGの"Timmy,Johnny,and Spike"を援用してみた~

「麻雀の魅力って、何?」

 そう聞かれたことは一度や二度ではないし、聞かれるたびに(おそらく予想されていたよりも高い熱量で)答えてきた。

 「ポーカーみたいに役を作る楽しさが合ったり、適度に運が絡んでるから同じ人が勝ち続けることがなくって、たった136枚の組み合わせなのに毎回ゲーム展開が変わるし、卓上でしか取れないコミュニケーションもある上に、なによりも知的でスリリングで……。」

 聞かれるたびにこう返してきたかは定かでない。適当に一つや二つ挙げていただけかもしれないし、毎回違うところを「なんと言ってもここが一番面白いところなんだけど……」と説明していたかもしれない。

 ただ、自分一人で「麻雀の面白さ」を考えるときでも、釈然としない思いがあった。それは、「自分は一体どこに一番麻雀の魅力を感じているんだ?」という疑問に答えられていなかったからだ。

 麻雀自体の駆け引きも楽しいし、麻雀漫画のスリリングな展開には熱くなるし、戦術の研究には好奇心が刺激されるし、大会で勝つことの高揚感はえも言われないものがある。しかし、それぞれに感じる魅力の度合いは年を経る内に変化しているように思われ、自分の中で「麻雀」というゲームの位置づけを正確に行うことが難しくなってきた

 そんな時、自分の盲を啓いてくれた概念が"Timmy,Johnny,and Spike"だった"Timmy,Johnny,and Spike"は、ゲームプレイヤーのタイプを三つに分けて定義した画期的な分類概念である。この概念は自分の中にある嗜好を整理するだけでなく、最近考えることがあった「人は何を求めて雀荘に行くのか」という問いに対しても新たな切り口を与えてくれるものであった。そこで、以下に"Timmy,Johnny,and Spike"と麻雀プレイヤーの分類について説明する。

 (この感動を(なるべく押し付けがましくならないように注意しながら)なるべく多くの人に伝えたいと思い、気づいたら総計7000字に渡る文章を書いてしまっていた……。しかも文章が無駄に固くなっているから、読みづらかったらごめんなさい……。)

"Timmy,Johnny,and Spike"とは

"Timmy,Johnny,and Spike"ティミー、ジョニー、スパイクとは、マジック・ザ・ギャザリング(Magic The Gatherin:以下、"MTG")というカードゲームで用いられる用語である。以下にMTG Wikiの説明を引用する。

 マジックをプレイする動機を理解し、カード開発の助けにするため作られたもので、「何を求めてゲームをプレイするか?」「どんなカードを好むか?」によってプレイヤーを分類しようというものである。ステレオタイプな人物に仮託して説明する場合が多いが、本来はマジックプレイヤーが持つ多彩な動機を分類し説明しようというものであり、実際のプレイヤーが必ずどれか1種に当てはまるというものではない。よってティミー/ジョニーといった風に組み合わせて傾向を説明することや、平時はティミーでないプレイヤーが極めて興奮を誘う局面に出会ったその瞬間だけティミー的な楽しさに心を奪われるということも、自然にあることである。(Timmy, Johnny, and Spike - MTG Wiki)

 この三類型は、ゲームが持つさまざまな魅力の中で、どの部分に強く惹きつけられるかによって分類したものと言うことが出来る。ティミー、ジョニー、スパイクの特徴はそれぞれ以下のようになっている。

1.ティミー

 マジックに楽しい体験を求めるプレイヤー。何かを達成することではなく、プレイそのものから得られる興奮や快感を求めていて、分かりやすく派手な能力効果を持ったカードを好む。ティミーはプレイの目的を設定する必要がない。ティミーにとってはプレイの瞬間に得られる体験そのものが目的なのだ。

2.ジョニー

マジックで自己表現をしようとする想像力あふれるプレイヤー。新しいデッキやコンボを自分で創造しそれを披露することを求めていて、変わったコンボを作れるカードや用途の広いカード、逆に有効に利用することが非常に困難なカードを好む。ジョニーにとってマジックが持つゲームとしての自由度の高さが何より重要となる。それが自らの個性を表現する道具になるからだ。

3.スパイク

マジックに困難な挑戦を求めるプレイヤー。大抵はトーナメント志向である。勝つこととそれによって自分の能力を証明することを求めていて、カードパワーの高いカードや、より高いプレイングスキルが求められるカードを好む。ゲームの本質が取り組みがいのある課題を提示することにあるならば、スパイクこそがその達成に正面から取り組んでいるゲーマーだといえる。ティミーで言ったことと鏡写しになるが、トーナメントプレイヤーの多くがスパイクであるからといって、大会に参加しないカジュアルプレイヤーの中にスパイクがいないということにはならない。より強い相手との、より多くのゲームに勝利することが最も一般的なスパイクの目標になるが、自らの能力を示せるならば勝利以外の要素もスパイクの目標になりうる。

 それぞれの特徴を一行でまとめるとこうなる。

1.ティミーはゲームに体験を求めるプレイヤー。

2.ジョニーはゲームに自己表現を求めるプレイヤー。

3.スパイクはゲームに挑戦を求めるプレイヤー。

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        図1「ティミー、ジョニー、スパイクのイメージ」

 

 これはMTGの開発者がゲームのユーザータイプを三つに分けて定義したものだが、この定義は麻雀にも援用できるのではないかとふと思ったのがこの文章を書くきっかけとなった。そこで、実際にやってみた。

 次回に続きます。