豆鳳凰民いせえびの麻雀備忘録

天鳳七段。豆鳳凰民のいせえびが、雀荘や麻雀本のレビューなどをしています。

【本】『無敵の人』第二話感想―麻雀漫画ファンなら絶対に見逃せない"通し"の見どころを徹底解説

第二話の簡単なあらすじ―三対一に追い込まれた「M」

 順平は「M」ことミズキの強さが不正ではなく本物であることを証明するため、ミズキがネット麻雀「鳳仙」でプレイしている動画を撮影してブイラインの社員に見せることにした。しかし、ミズキがMであることは認められたものの、見えないところで不正をしている可能性があるとして、ミズキの疑いが晴れることはなかった

 そこで、「Mの実力が本物であることを証明するため」として、スタジオで生中継しながらリアル麻雀を打つことを提案される。

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 この提案を受け入れた順平だったが、もちろんこの話には裏があった。

 相手の三人はグルで、通しを使ってMを陥れようとする策略だったのである。こうして、三対一という圧倒的に不利な状況下でMは対局をすることになった…。

(かなりざっくりとしたあらすじなので、実際に読むことを強くおすすめします)

今後の見どころ―いかにして通しを逆手に取るか

 前回の感想で、「いかにしてMが"必勝の理"を積み上げていくかが見どころになる」ことを述べた。そのため、今後は以下のような展開があるだろうと予想していた。

一つの解決策として、特殊な状況下での対局を増やすというものが思いつく。これは、特殊ルールを採用した麻雀や、なんらかの縛りを受けての対局や、相手がイカサマをしている状況など、通常の麻雀と異なる状況での勝負を作中で増やすというものである。この場合、通常の麻雀に比べて不確定要素を減らすことが可能になる上、漫画としてのハッタリも効かせやすくなる。

spiny-lobster.hatenadiary.jp

 そして、実際にMは"通しを使った三対一"という状況で戦うこととなった。作者がこういう展開にしたということは、緻密な読みによって相手の手を看破して利用するという"必勝の理"をすでに用意していると考えられる。今後の展開に期待できるところ。

 そこで、次回以降の見どころとしては、Mがいかにして通しを逆手に取るかという点が中心となる。

 だが、麻雀漫画ファンとしては、この"通し"についてもっと突っ込んで注目したいところが三つある

それは、

 

どうやって通すのか

何を通すのか

③看破した情報をどう利用するのか

 

という三つである。

見どころ①「どうやって通す?」

 "通し"と一言にいってもその種類はたくさんある。言葉を使ったチクローズや、指で伝える指ローズ、また舞台装置や電子機器を使ったものまである。麻雀漫画では、敵コンビがどんな通しを使っているかがよく見どころになる。

 通しとしてよく出てくるものを大別すると、大きく言葉系、動作系、その他(舞台装置・道具等)に分けられる。

 

●言葉系

・台詞の一文字目(水戸兄弟が使い、安永が見破る『むこうぶち』)

・同じく台詞の一文字目(敵コンビが使うものを桜井章一が見破る『雀鬼』)

●動作系

・リー棒の置き方(仲井戦にて使われアカギが意趣返しをする『アカギ』)

・指の本数で点数を教える(通しと言うほどでもないが、さるとよろずが使用『フリー雀荘最強伝説 萬』)

・切るまでの秒数(老人コンビが使用『哲也』)

●その他

・モスキート音(壁役(覗き役)と合わせて手を通される『HERO』)

・特殊な部屋による覗き(傀がタバコの煙を使って阻止する『むこうぶち』)

・同じく特殊な部屋による覗き(モールス信号と合わせて手を通される。麻雀漫画ではないが、Vシネ『雀鬼』)

 

 ぱっと思いつくだけでこれだけあるので、掘り起こせばかなりのパターンがあることと思う。

 こうした中で、『無敵の人』で使われるのは動作系の通しではないだろうか。

 今回は対局の様子をネットで生中継ということなので、対局中にべらべらしゃべりだす言葉系や、何かしらの装置を必要とする通しは使えないものと考えられる。そうした時、自然に使えるのは動作系の通しということになる。

 さらに、通しに用いる動作は見られていても自然な動きである必要がある。露骨な指ローズは姿勢によるサインは見ている人にバレバレとなるので使用できない。

 こうした制約を考えると、考えられる方法として理牌を用いた通しがある。理牌は対局中にしていても自然な動きであるため、「牌をn枚まとめてこちらに動かしたら~」といった通しを行うことが出来る。これは一案だが、「麻雀中にしていても自然な動作」の中にサインを混ぜるという方針である可能性は高いと思われる。

 また、通しの方法を考えるにあたり絶対に見過ごせないのが、起点となる合図をどうやって送るかである。いくら緻密な通しをあらかじめ決めていても、味方がそれに気づかなかったら意味がない。チクローズの場合は「手の内容を伝える」ことと「通しを送ると気づかせる合図を出す」ことが話すという行為によって同時に行われるため、この問題は発生しない。

 しかし、動作系の通しの場合、その動作を行う前に「これから通しを送りますよ」という合図を出すことが必要となる。麻雀では自分の手や捨て牌、相手の手出しツモ切りなど注意して見るべき箇所が多い。さらに、今回は三人がグルとなっているため、サインを受け取るとしたら他二人の動作を常にチェックしている必要が出てくる。そのため、味方が気づきやすい形で合図を送らなければ、せっかくの通しも見逃される可能性が高いのである。

 これについては「それでも常に集中して全員の動作を見続けていれば見逃すことはない」という意見もあるかもしれないが、甲斐谷先生はこの合図問題に回答を用意していると考えられる

 なぜなら、「サインを送る時にはそのメッセージが見過ごされない工夫をしなければならない」という主張は同じ作者の『ONE OUTS』にて行われているからである。同様の主張を引き継ぐなら、今作『無敵の人』においても合図問題は見過ごされないだろう。(なお、『ONE OUTS』では「常にサインを送り続ける」という回答を出した)

 この合図問題については、「リーチ発声の直後に通しを送ると決めておく」や「上や左の牌から離して置いたら通しの合図」のように、あらかじめサインを送るタイミングを決めておいたり、捨て牌を利用するといった解決策が考えられる。だが考えてみると分かるが、違和感なく気づかれない形で合図を送ることは難しい。

 通しの方法とその合図について、甲斐谷先生がどのような答を用意しているかは大きな見どころである。

見どころ②「何を通す?」

 さて、うまいことばれずに通しを送る方法が決まったところで、次に問題となるのが「何の情報を送るか」である。ちょっとした動きによって伝えられる情報量はわずかでしかない。麻雀牌は34種類もあるため、ある特定の牌を指定するだけでも一苦労である。

 伝えられる情報量が限定的である以上、最も効果的な情報について通しを行わなければならない。自分の手牌13枚の情報を送り続けることは不可能だからだ。そう考えると、やはり待ちの情報が良いのではないかと思われる。それにリーチ時に待ちを送るのであれば、リーチの発声やリーチ棒の置き方、置くタイミングなど、通し開始の合図を出しやすいため都合がよい。

 待ち以外で伝えることが有効な情報としては、持っているドラの枚数トイツ持ちの役牌の情報などがあるが、どうしても地味であるし漫画的に見栄えが悪い。他に効果的なのは鳴きたい牌の指定があるが、これは一気に難易度が上がる。かといって、待ちの情報だけでは通しとしてのインパクトが弱いし、相手側の"必勝の策"とまではならない。

 限られた情報しか送れない中、何を通すのが有効であると考えているのか。そこもまた見どころである。

見どころ③「見破ってどう利用する?」

 ここまでは通しを使う側の事情について書いてきたが、本作の主人公は通しを使われる側である。そのため、通しを見破った上で、それを利用しなければならない。福本作品でおなじみの「逆手を取ってねじ上げる」である。

 ここで問題となるのは、「Mがどこまでの情報を得られたら『そりゃ絶対勝てるわ』と読者は納得するか」である。

 なお、あくまでも問題となるのは"納得感"であるというところも注意が必要。その競技の性質上、相手の手牌がすべて見えていたとしても"100%勝つ"のが難しいのが麻雀である。極端な話、鳴くこともアガることもできないまま、二局で他家が飛んで三着終了ということもありうる。そのため、「これを知っていたら確実に勝てるという情報」ではなく、「これだけ知っていたらそりゃ勝つだろうね」と読者が納得できるラインの情報をMが把握するという展開になる。

 そう考えた時、やはり"待ちの情報"だけでは「それなら必勝できそう」というイメージからはほど遠い。そもそも待ちの看破だけなら漫画的なハッタリを加えれば相手の捨て牌のみからでも可能である。せっかく"通し"というギミックを使っている以上、それを利用することで自分の打ちまわしが決定的に有利になるような情報を獲得するに違いない。

 その一つの形としては、"通しの情報"+"Mの超人的な読み"によって手牌・山読みをするというものが考えられる。例えば相手の"待ちの情報"を取得したとしたら、「序盤に3pが捨ててあるのに2-5p待ちということは三トイツ形であった可能性が高くて他の捨て牌から見るとそのトイツは…」といった形で、通しを看破することで手に入れた情報にMの特性である超人的な読みを合わせることで、"必勝"を納得できるほどの情報をMが手に入れるといったものである。これは一例だが、何かしらの形でMがかなりの情報量を得る展開になるのだろう。

 読者が「すげえ!そりゃM勝つわ!」という情報をどうやって手に入れるのか。ここも見逃せないポイントである。

 

 通しについて長々と考察したが、なんといっても『ONE OUTS』や『LIAR GAME』の甲斐谷先生である。予想を超える闘牌を見せてくれるに違いない。

 『無敵の人』掲載のマガジンの次号は1/13発売。必見である。

 

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