いせえびの麻雀備忘録

天鳳七段。豆鳳凰民のいせえびが、雀荘や麻雀本のレビューなどをしています。

【本】甲斐谷忍新作麻雀漫画『無敵の人』第一話感想―甲斐谷先生、こんなにガチでいいんですか?

LIAR GAME』の甲斐谷忍が週間少年マガジンに麻雀漫画を新連載!

 2015年12月、麻雀漫画ファンの間に衝撃が走った。

 なんと、週間少年マガジンに麻雀漫画が連載されることになったのだ。マガジンに麻雀漫画が連載されるのは『哲也―雀聖と呼ばれた男』が2004年に連載終了して以来、11年ぶりのこと。週間少年誌全体で見ても、チャンピオンのギャンブル漫画『ギャンブルフィッシュ』で麻雀を題材としたゲームがあったくらいで、麻雀をメインの題材としたものはここ最近存在していなかった。

 しかも、作者は甲斐谷忍。『LIAR GAME(ライアーゲーム)』ONE OUTS(ワンナウツ)』等の名作頭脳戦漫画を輩出してきたヒットメーカーが、麻雀漫画を引っさげて少年漫画の世界に飛び込んできた。それがこの『無敵の人』である。これには期待しないほうが無理というもの。

第一話の簡単なあらすじ

 舞台は麻雀が大流行している現代日本(この設定は咲に通じるものがある)。この世界では「雀仙」というオンライン麻雀サイトが大人気で、その運営会社であるブイラインの社員であることは高い社会的ステータスを意味していた。

f:id:bookandwrite:20151228031329j:plain

               どう見ても天鳳

 主人公の順平はこのブイラインの掃除バイト。妹と二人の貧乏生活から脱出し、憧れの正社員になりたいと日々思っていた順平は、ある日一攫千金の噂を耳にする。

 それは、「不正行為をしていると思われるプレイヤー"M"の不正の証拠を押さえれば300万円」というものだった。

f:id:bookandwrite:20151228031335j:plain

            つのはこんなこと言わない

 "M"は320戦無敗という驚異的な記録で雀仙にたどり着いたプレイヤーである。その超人的な記録に対し、他のユーザーは羨望の目を向けるのではなく、「どうせイカサマだろう」と懐疑的だった。そのため、"M"の成績への不信が雀仙自体への不信に繋がることや、"M"から不正の方法が流出することを恐れたブイラインは、その不正行為に対して懸賞金を賭けたのであった。

 順平はこれを絶好のチャンスと捉え、"M"の不正を暴こうと決心する。そして、ブイラインの社長に掛け合い、不正を抑えた暁には正社員への登用を約束させる。

 そんな順平がファミレスでバイトをしていたある日、ノートパソコンで麻雀をしている少年を見つける。その画面を覗きこむと、なんと"M"その人であった。

 順平はなんとか不正を暴くため、友達になろうと少年の家に通いこむ。しかし、"M"の姉からその超人的な強さの理由と悲しい過去を聞かされ、順平は"M"の不正を疑い売ろうとしていた自分の浅ましさに気づかされる。そして、"M"と本当の友達になろうと順平は決意する。

 以上が第一話の簡単なあらすじである。(最新号の内容であるため、核心的な部分には触れないでおく)

感想―「面白いけど、ガチすぎない?」

 まず所見での感想は、「かなり面白いけど、これ麻雀知らない人がついていけるの?」というものだった。

 なにしろ、"読み"が本格的。強引なところはあるものの、ちゃんと理屈を積み重ねた読みをしている。

f:id:bookandwrite:20151228031342j:plain

              この後、さらに解説は続く

 しかも、このコマを見ても分かる通り、麻雀用語を説明なしにバンバン使う。麻雀のルールを説明するどころか、平気でイーシャンテンや単騎といった用語を使うのだから、一般読者に足並み揃える気がないことが伺える(なお、初期の『咲』ではコマ外で説明があったが、本作品では一切ない)。

 これに関しては、麻雀ファンと一般読者の両方を向くことで中途半端な立ち位置になることを避けたのだと考えられる。例えば、『哲也』の場合は一般読者にウケるように、わかりやすい必殺技やハッタリの効いた演出をして盛り上げるという方向性を選んでいた。一方で、『無敵の人』は第一話からこれでもかと言うほど理詰めで闘牌を書いている。ここらへんの勝ちへの"理"を妥協せずに積み上げていくスタイルはさすが甲斐谷先生といったところ。

 闘牌描写をしっかりしてくれるというのは、麻雀漫画ファンとしてはたまらないところ。しかし、さすがに一般読者すべてを置いてけぼりにしっぱなしというわけにはいかないだろう。

 この点について、作者はインタビューで次のように答えている。

あくまで漫画なので、漫画としてのおもしろいものを描くことが第一。だけど、なまじ麻雀や競馬のおもしろさを知っていると、マニアックに押し過ぎて、意味がわからなくなってしまうことがある。

  そして、だからこそ「基本は少年誌らしく」行くとしている。今後は二人の友情にフォーカスしていくようなので、ストーリーの本線は一般読者にもわかるような友情物を、闘牌部分は麻雀ファンに向けたコアな描写をしていくものではないかと思われる。

今後の見どころ―"必勝の理"をどれだけ作れる?

 個人的な今後の見どころとしては、"必勝の理"をどれだけ作れるかというところにあると思っている。"必勝の理"とは、「こういう理由があるから、こういう選択肢を取れば必ず勝てる」という理屈のことである。

 これまでの作品を見れば分かるように、甲斐谷忍天才が理によって勝ち続けるという作風を得意としている。本作『無敵の人』もその方向性を歩むものと思われる。

 しかし、麻雀において"必勝の理"を組み立てることは非常に難しい。言わずもがななことであるが、麻雀は運の要素が非常に強い。そのため、"かなり確度が高い読み"をすることが可能であったとしても、"必勝=100%"の読みをすることは簡単ではない。両者の差は途方もなく大きい。

 しかも、それをマニアックになり過ぎず、かつ週刊連載という形で展開していかなければならないという制約まである。この制約も非常に大きい。

 一つの解決策として、特殊な状況下での対局を増やすというものが思いつく。これは、特殊ルールを採用した麻雀や、なんらかの縛りを受けての対局や、相手がイカサマをしている状況など、通常の麻雀と異なる状況での勝負を作中で増やすというものである。この場合、通常の麻雀に比べて不確定要素を減らすことが可能になる上、漫画としてのハッタリも効かせやすくなる。

 週刊連載で、一般読者にも楽しめるようにしながら"必勝の理"を組み立てる。ただでさえ難易度の高いことを、厳しい制約下でどうやって成功させるのか。次回以降の期待値も高い、非常に面白い新連載だった。

無敵の人第一巻、絶賛発売中!

 


無敵の人(1) (週刊少年マガジンコミックス)

【雑記】麻雀打ちのタイプを嗜好によって三つに分類してみた③~"Timmy,Johnny,Spike"の分類はどう役に立つ?~

 前回の続きです。

で、分類して何の役に立つの?

 「ふーん。たしかにカードゲームの性格分類は麻雀にも使えそうだね。で、それで?」

 ここまで読んでそう思った人は多いかもしれない(それなのに読んで頂いてありがとうございます……!)。だが、この分類は麻雀に関する議論をするとき、またゲームとしての麻雀を考える際に非常に重要であると考えている。

  ある集合をその属性によって分類し、定義するということは学問領域のみならずあらゆる場面で行われている。卑近な例では、「リア充」と「非リア」、「草食系男子」と「肉食系男子」といった定義も、特定の集団の考察及び分類によって生じた。また、最近では「意識高い系」や「オタサーの姫」のように、近年特徴的に現れてきた人々を指す新たな言葉も生まれている。

 こうした分類は決して無駄ではない。人々を新たに定義するということは、その人々を発見し、イメージを共有化することである。我々は「リア充」という言葉を発明することにより、「一般化されたリア充像」を基に議論をしたり、「リア充」な人の性質をより深くを考察したり、はたまた「リア充」有効なマーケティングは何かといったことを分析したりすることが可能になる。我々は言葉によって世界を分節する。「語りえぬことを語る」ことは出来ない。そのため、新たな分類の獲得は思考の深化、議論の先鋭化に大きく寄与するものなのである(もちろん、誤った分類や過度な一般化は議論の混乱を招くこともあるが……)。

 では、具体的にどのような場面でこの分類が役に立つのか。それが最も有効に働くのは、ユーザー層の分析が必要な時である。つまり、麻雀に関するビジネスを始めようとする時と言える。

 そもそも"Timmy,Johnny,and Spike"は、ゲーム会社がより良い製品開発のために作られた概念である。より効果的なマーケティングを行うためには、ターゲット層を分析し、よく理解する必要がある。つまり、単なる学術的な概念整理のためではなく、ビジネスのためという実利的な要請から生まれた分類なのである。

 麻雀においてユーザー層の分析が必要となる人として、雀荘経営者麻雀ゲームの開発者のように、麻雀の場を提供するビジネスに関わる人が想定される。特に、勝者に商品を与えない形式で麻雀の場を作ろうとするときは踏み込んだ分析が必要となる。先述したように、麻雀ユーザーはスパイク層が中心を占めている。巷にある雀荘のほとんどがオンレートであることからもそのことが覗える。そのため、彼らにレートという「餌」を与えない場合、代わりに何をしなければいけないかということを考える必要がある。

 例えばノーレート雀荘がスパイク層の取り込みを諦めないのであれば、レート以外の「餌」が必要となる。賞品以外でスパイクの食指を動かすものは名誉であると考えられる。それならば、提供する名誉が果たして本当にスパイクにとって満足のいくものなのか、またスパイク層の戦場と競合した時に勝てるだけの魅力があるのか、ということを十分に考慮した上でサービスを設定しなければならない。極端な話、天鳳ガチ勢を取り込もうと思ったら、天鳳を超える名誉、利便性、快適性を提供しなければいけないということである。

 また、ティミーを主なターゲットとする場合にも同様に考える必要がある。その場合、ゲーム体験それ自体に付加価値をつけていくという方向性が存在する。有名プロと打てたり、独自のルールで打てたりといった試みもこの体験への付加価値付けである。体験への付加価値付けで成功した最好の例は「あきば雀荘てんぱね」だろう(

あきば雀荘『てんぱね-teMpane-』│秋葉原でメイドさんと楽しく麻雀しませんか?

)。

 「てんぱね」は、ノーレートでありながら初回来店料1000円次回以降1500円、さらに東風一回630円という、普通の雀荘では考えられないような値段設定となっている。この強気の値段設定を支えているのは、体験に特化したサービスである。「てんぱね」では、コスプレをした女の子と麻雀が出来る他、「ジョブ」や「スキル」、「装備」といったRPGを模した独自のシステムを採用することにより、他にはない体験が出来る雀荘として好況を博している。実際に、現在の店舗に移った2009年から現在までの6年間もこの業態を維持している。普通のフリー雀荘に通う人から見たら驚異的と言える。しかし、この雀荘がティミーの取り込みに特化したことで成功しているということは紛れもない事実である。

 このように、ターゲットとなるユーザー層の分類はビジネスの方向性考える有効な枠組みとなることが考えられる。

 また、"Timmy,Johnny,and Spike"の分類は、ビジネス以外の場面でも役に立つ。まず、「あの人の言う『流れ論』はティミー的な楽しさを追求するためのものだから、それに対して最新の研究を持ち出して反論するのは筋悪だ」や、「他の人と差別化するためにも、自分はこれからジョニー的な面を打ち出していこう」のように、自他を客観的にポジショニングして整理する道具として使える。また、この概念が浸透すれば「あの人は独特の立ち位置だけど、ジョニーとスパイク両方の面を強く持っているね」と、コミュニケーションを円滑化する道具ともなる。概念の整理は考察や議論を深める役に立つ行為なのである。

 もちろん、"Timmy,Johnny,and Spike"で説明で述べた通り、プレイヤー全てがどれか一つのみに当てはまるというものでもないし、そのどれにも当てはまらない可能性もある(それらの可能性はベン図にて示した)。また、この分類が的外れである可能性はある。

 しかし、こんなにも面白い麻雀というゲームの悪魔的な魅力を考える時、その魅力を分類すると言う行為それ自体は必要不可欠なのではないだろうか。本論ではMTGに存在する"Timmy,Johnny,and Spike"という概念を援用したが、この概念の浸透や、麻雀に特化した新たな"Timmy,Johnny,and Spike"の発明が、この雑文をきっかけになされたら……と夢想するばかりである。

(大鉈を振るい考察を進めた結果、堅苦しくて読みにくい文体となってしまいました……。最後まで読んで頂いた方、本当にありがとうございました<(_ _)>)

(また、本文中にて言及した方々や「てんぱね」につきまして、もし事実誤認等がございましたら直ちに修正致しますので、その時はぜひお申し付けください)

 

関連記事

spiny-lobster.hatenadiary.jp

spiny-lobster.hatenadiary.jp

【雑記】麻雀打ちのタイプを嗜好によって三つに分類してみた②~"Timmy,Johnny,Spike"を麻雀に当てはめてみた~

 前回の続きです。

ティミー、ジョニー、スパイクを麻雀に当てはめてみた

1.ティミー

 ティミー的な楽しみとは、麻雀のプレイそれ自体の面白さを味わうものである。毎回異なる配牌をもらい、手役を作り、打点とスピードのバランスを上手く取りつつ他のプレイヤーとの駆け引きを楽しむ……。麻雀にハマった人は例外なくこうしたプレイ自体の魅力に憑りつかれた経験がある。ノーレートでひたすら何時間でも何十時間でも飽きることなく、狂ったように摸打を繰り返した思い出を持つ人は多いのではないだろうか(高校時代、「麻雀合宿」と称してひたすら三泊四日で打ち続けたのが懐かしい……)。

 麻雀におけるティミーには、麻雀アプリやネット麻雀、またはノーレートのセットを度々囲んで楽しむといったカジュアルプレイヤーが当てはまる。戦術の探求や一回一回の勝敗への関心は(スパイクに比べ)少なく、もっぱらゲームの過程を楽しむプレイヤーである。

2.ジョニー

 ジョニー的な楽しみとは、新セオリーの発見や独自の麻雀理論を構築・表現することに快感を得るものである。研究者的、パイオニア的な楽しみ方と言ってもいい。麻雀の戦術は近年急速に洗練されてきており、現在と10年前、さらには20年前とではセオリーが全然違っている。そのような変革には、実験と研究を重ね、理論の構築を固めてきたジョニーが大きく貢献してきた。

 麻雀におけるジョニーとは、麻雀というゲームそれ自体の研究への関心が強い人々である。具体的には、麻雀の数理的研究の先駆者である『科学する麻雀』のとつげき東北氏、高度に理論化された戦術論をいち早くネットに公開していた『現代麻雀技術論』のネマタ氏、現在の麻雀研究の最先端を走る『統計で勝つ麻雀』のみーにん氏が当てはまるものと考えている。また、数理研究はしていないものの、尖った戦略観による独自の理論を構築している『黒いデジタル麻雀』の石橋プロや自分の打ち筋をデータと合わせて体系化した『神速の麻雀』の堀内正人氏もジョニー的な性格が強いのではないかと思う。(※これらは完全に私見です!)

3.スパイク

 スパイク的な楽しみとは、麻雀に勝利することによって得られる名誉や賞品の獲得を追い求めることである。通常、麻雀には何かが賭かっていることが多い。天鳳ならRやポイントが、プロのリーグ戦ならタイトルが、フリー雀荘なら……。こうした「勝利に付随する何か」に価値を置く人はとても多いため、麻雀打ちの多くがこのスパイクに分類されるものと思われる。

 麻雀におけるスパイクには、オンレートで打つ人ネット麻雀で高段位を目指す人プロ団体に所属している人などが挙げられる。さきほど「ジョニーは麻雀研究への関心が強い」ということを述べたが、スパイクの人々が麻雀研究に興味がないということは意味しない。むしろ、最新の戦術に関する情報収集、自身の戦略の洗練化を貪欲に求めている。だが、あくまでそれらは「自分が勝ち続ける」ことへの関心から生じるものである。自ら研究を進めて新理論の構築・発表するという動機の強弱によって「ジョニー」と「研究熱心なスパイク」とは区別される。

(ちなみに、私はティミー⇒ジョニー⇒ジョニー寄りのスパイクへと変遷してきたと自覚している)

 それでは、長々と説明してきたけれどこのような分類が果たして何の役に立つのか。概念を整理する意義とはなんなのか。次はそのことについて説明する。

 

 (以下は麻雀ファンにとって垂涎ものの名著ばかり!読んだことのない人はぜひ読んでみてください!)

科学する麻雀 (講談社現代新書)

科学する麻雀 (講談社現代新書)

 

 

 

おしえて!科学する麻雀

おしえて!科学する麻雀

 

 

勝つための現代麻雀技術論

勝つための現代麻雀技術論

 

 

 

もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

 

 

 

統計で勝つ麻雀 (近代麻雀戦術シリーズ)

統計で勝つ麻雀 (近代麻雀戦術シリーズ)

 

 

 

黒いデジタル麻雀 ?現代流データ戦術を斬る? (マイナビ麻雀BOOKS)

黒いデジタル麻雀 ?現代流データ戦術を斬る? (マイナビ麻雀BOOKS)

 

 

 

神速の麻雀 堀内システム51

神速の麻雀 堀内システム51

 

 

【雑記】麻雀打ちのタイプを嗜好によって三つに分類してみた①~MTGの"Timmy,Johnny,and Spike"を援用してみた~

「麻雀の魅力って、何?」

 そう聞かれたことは一度や二度ではないし、聞かれるたびに(おそらく予想されていたよりも高い熱量で)答えてきた。

 「ポーカーみたいに役を作る楽しさが合ったり、適度に運が絡んでるから同じ人が勝ち続けることがなくって、たった136枚の組み合わせなのに毎回ゲーム展開が変わるし、卓上でしか取れないコミュニケーションもある上に、なによりも知的でスリリングで……。」

 聞かれるたびにこう返してきたかは定かでない。適当に一つや二つ挙げていただけかもしれないし、毎回違うところを「なんと言ってもここが一番面白いところなんだけど……」と説明していたかもしれない。

 ただ、自分一人で「麻雀の面白さ」を考えるときでも、釈然としない思いがあった。それは、「自分は一体どこに一番麻雀の魅力を感じているんだ?」という疑問に答えられていなかったからだ。

 麻雀自体の駆け引きも楽しいし、麻雀漫画のスリリングな展開には熱くなるし、戦術の研究には好奇心が刺激されるし、大会で勝つことの高揚感はえも言われないものがある。しかし、それぞれに感じる魅力の度合いは年を経る内に変化しているように思われ、自分の中で「麻雀」というゲームの位置づけを正確に行うことが難しくなってきた

 そんな時、自分の盲を啓いてくれた概念が"Timmy,Johnny,and Spike"だった"Timmy,Johnny,and Spike"は、ゲームプレイヤーのタイプを三つに分けて定義した画期的な分類概念である。この概念は自分の中にある嗜好を整理するだけでなく、最近考えることがあった「人は何を求めて雀荘に行くのか」という問いに対しても新たな切り口を与えてくれるものであった。そこで、以下に"Timmy,Johnny,and Spike"と麻雀プレイヤーの分類について説明する。

 (この感動を(なるべく押し付けがましくならないように注意しながら)なるべく多くの人に伝えたいと思い、気づいたら総計7000字に渡る文章を書いてしまっていた……。しかも文章が無駄に固くなっているから、読みづらかったらごめんなさい……。)

"Timmy,Johnny,and Spike"とは

"Timmy,Johnny,and Spike"ティミー、ジョニー、スパイクとは、マジック・ザ・ギャザリング(Magic The Gatherin:以下、"MTG")というカードゲームで用いられる用語である。以下にMTG Wikiの説明を引用する。

 マジックをプレイする動機を理解し、カード開発の助けにするため作られたもので、「何を求めてゲームをプレイするか?」「どんなカードを好むか?」によってプレイヤーを分類しようというものである。ステレオタイプな人物に仮託して説明する場合が多いが、本来はマジックプレイヤーが持つ多彩な動機を分類し説明しようというものであり、実際のプレイヤーが必ずどれか1種に当てはまるというものではない。よってティミー/ジョニーといった風に組み合わせて傾向を説明することや、平時はティミーでないプレイヤーが極めて興奮を誘う局面に出会ったその瞬間だけティミー的な楽しさに心を奪われるということも、自然にあることである。(Timmy, Johnny, and Spike - MTG Wiki)

 この三類型は、ゲームが持つさまざまな魅力の中で、どの部分に強く惹きつけられるかによって分類したものと言うことが出来る。ティミー、ジョニー、スパイクの特徴はそれぞれ以下のようになっている。

1.ティミー

 マジックに楽しい体験を求めるプレイヤー。何かを達成することではなく、プレイそのものから得られる興奮や快感を求めていて、分かりやすく派手な能力効果を持ったカードを好む。ティミーはプレイの目的を設定する必要がない。ティミーにとってはプレイの瞬間に得られる体験そのものが目的なのだ。

2.ジョニー

マジックで自己表現をしようとする想像力あふれるプレイヤー。新しいデッキやコンボを自分で創造しそれを披露することを求めていて、変わったコンボを作れるカードや用途の広いカード、逆に有効に利用することが非常に困難なカードを好む。ジョニーにとってマジックが持つゲームとしての自由度の高さが何より重要となる。それが自らの個性を表現する道具になるからだ。

3.スパイク

マジックに困難な挑戦を求めるプレイヤー。大抵はトーナメント志向である。勝つこととそれによって自分の能力を証明することを求めていて、カードパワーの高いカードや、より高いプレイングスキルが求められるカードを好む。ゲームの本質が取り組みがいのある課題を提示することにあるならば、スパイクこそがその達成に正面から取り組んでいるゲーマーだといえる。ティミーで言ったことと鏡写しになるが、トーナメントプレイヤーの多くがスパイクであるからといって、大会に参加しないカジュアルプレイヤーの中にスパイクがいないということにはならない。より強い相手との、より多くのゲームに勝利することが最も一般的なスパイクの目標になるが、自らの能力を示せるならば勝利以外の要素もスパイクの目標になりうる。

 それぞれの特徴を一行でまとめるとこうなる。

1.ティミーはゲームに体験を求めるプレイヤー。

2.ジョニーはゲームに自己表現を求めるプレイヤー。

3.スパイクはゲームに挑戦を求めるプレイヤー。

f:id:bookandwrite:20151209002220p:plain

        図1「ティミー、ジョニー、スパイクのイメージ」

 

 これはMTGの開発者がゲームのユーザータイプを三つに分けて定義したものだが、この定義は麻雀にも援用できるのではないかとふと思ったのがこの文章を書くきっかけとなった。そこで、実際にやってみた。

 次回に続きます。

【雀荘レビュー】麻雀ブル@中野店

雀荘レビュー第八段は19番ブル中野店。JR中野駅北口の目の前にあります。

 基本情報

【店名】麻雀ブル

【HP】http://www.jan39.com/shop.php?tnp=11485

【最寄り駅】中野

【場代】600G/350G。トップ賞200G。

【ルール】

ごく一般的な東南戦。テンパイ連荘。赤は3pが二枚のみ一枚は「さん」と書かれている

祝儀は一発、裏、「さん」と書かれた赤3pを含む面前和了

白ポッチ二枚

【雰囲気】

とても良い。

マナーをとても大事にしており、引きヅモや先ヅモはしっかりと注意していたのが好印象。マナー重視の看板に偽りなし。

いわゆる「もしラス」コールを認めていない点には注意が必要。

【イベント】

期間に応じて様々やっている模様。以前行った時には、「平日早朝に来た人はラスを引くまで場代無料」などのイベントを行っていた。

 

ここがユニーク!:「赤3p」

5に一枚ずつ入っている通常の赤牌とは違い、赤い3pが二枚入っている。その内一枚は「さん」と書いてあり、祝儀の対象となる。

このルールだと筒子のみがやや優遇されることとなるが、それよりも赤牌が他に入っていない点が重要であるように感じた。面前志向が強くなるとともに、ホンイツの価値が相対的に上昇する。また、鳴きやダマで高打点を作ることが難しくなるため、通常の麻雀以上にガンガンリーチをかけていく展開となる。そのため、回し打ちをして凌ぐよりも、押し引きのメリハリをはっきりつけていく打ち方をする必要があると思えた。

 

店内は広々としていて、雰囲気も落ち着いているため打ちやすい。

個人的に良かったのが、同卓していた人がツモ牌を叩きつけた時、即座にメンバーから注意が入ったこと。あたりまえと言えばあたりまえだけれど、この手のマナ悪を容認してる店はほんと多い。
客層は高めで、平日夕方に行っても学生はほとんどいなかった。同じエリアにZOOがあるからそっちと住み分けされてるのかなという印象。
麻雀以外のところで余計なストレスがかからないため、中野で打つならオススメ。新規でもらえる10ゲームサービス券も地味に嬉しい(一回二枚まで、さんグループで利用者可能)。

【大会レポ】8/8東京大学麻雀サークル「白」主催麻雀大会

先日8月8日に行われた、東京大学麻雀サークル「白」さん主催の麻雀大会に参加してきました。白さんのTwitterアカウントはこちら。

twitter.com

大会の形式は、前半・後半それぞれで東風3回+東南1回を行いその合計を競うというもの。前半と後半の間で一度集計が入り、そこで下位半分が足切りとなる。

大会参加人数は56人と、大盛況の大会でした。以下、備忘録として印象に残った場面だけ簡単に書いていきます。

 

 

大波乱の一回戦

一回戦、同卓した人々が何やら顔見知りらしく和やかに話している。そこで話を聞いてみたところ、なんと上家が全日本麻雀協会のプロで天鳳九段の平沢元気プロ、対面が白の前代表、下家がある麻雀団体のプロだと発覚。大会にも関わらずほぼ鳳東というエグい組み合わせ......。

さっそくこれとかツイてないなと思っていたが、ツイてないどころかとんでもなかった

出親で始まった一局目の配牌が、

四筒:麻雀王国四筒:麻雀王国五筒赤:麻雀王国六筒:麻雀王国七筒:麻雀王国二索:麻雀王国二索:麻雀王国二索:麻雀王国九索:麻雀王国東:麻雀王国東:麻雀王国南:麻雀王国南:麻雀王国北:麻雀王国

 

下家の南をノータイムでポン。対面さんが切った第一打の東で7700の出アガり

さらに、次の局では中トイトイドラ3でテンパイしているところに、満貫テンパイの対面さんが4cmから打ちこみ開始五分で終了。ひどい東風だった。

 

 

とりあえずの足切り回避

その後は貯金を活かし、2着-4着-3着で予選通過の28人中17位で無事足切り回避。21000点4着、30000点持ち3着だったため、なんとかまん中やや下あたりにつけられたものの、入賞を狙うには遠い位置。

この予選の中で少し興味深い牌姿があった。

オーラスアガりトップ。五順目。北家。トップは自分の上家。

一筒:麻雀王国三筒:麻雀王国五筒赤:麻雀王国七筒:麻雀王国八筒:麻雀王国八筒:麻雀王国九筒:麻雀王国九筒:麻雀王国七萬:麻雀王国八萬:麻雀王国ポン:麻雀王国北:麻雀王国北:麻雀王国北:麻雀王国

ここで六萬:麻雀王国九萬:麻雀王国を引くかチーした場合に何を切るかというもの。普段なら手拍子で一筒:麻雀王国を打ちそうなところだけれど、五筒赤:麻雀王国が面白そうと立ち止まる。自分の上家が絞り気味に打つことを考えた時、あえて赤を打つことでイーシャンからテンパイへの速度が上がることと、最終的に赤打ち数順後の二筒:麻雀王国に取ることが出来る。実際には結局イーシャンにもならなかったけど。

そうしたなんやかんやがあって後半戦に突入。

 

 

アガるべきか、見逃すべきか

その後、後半の東風三回戦は2着-1着-1着と好調。残るは半荘一回を残すのみとなったこの場面で途中集計の発表が行われた。それによると現在5位。トップとの差は約60p。上位四人の誰か一人は少なくとも40000点以上のトップを取るものと考えた時、90000~100000点のトップを取らなければ優勝できないという条件。箱下は即終了のこのルールでは相当厳しい。

しかし、最後に猛烈にツキまくり、倍満、親ハネ、親ハネなどと立て続けにアガり、気づけば77000に。優勝条件が見えてくる。

そこで究極の選択を迫られたのが次の場面。

上家が2600点、対面が16100点、下家が4300点といった感じの点棒状況。トビを出さないためには、対面からの出アガりか2000オールくらいしかできない。

そこへリーチドラ一の両面テンパイが入る。若干迷った末、リーチ。この時、対面からの出アガりまたはツモアガり以外はスルーと決めていた。80000点を越えての終了でも優勝がワンチャン見えるものの、他三人が厳しい手作り上の制約を課された状態で親番を続けられるという大会独特の状況を考えたら、もうひとアガり狙えるのではないかと欲を出した。

実際に上家からアタり牌が出るもののスルー。倒せばおそらく3位以内は固いが、優勝にはいまひとつ足りないのではないかという感覚だった。

しかし、結果的にはその判断が裏目に出た。次局、遅い展開になる中でひたすら打点を追求し、ついに倍満確定、ツモって三倍満、ツモ+裏・カン裏で二枚乗れば役満という手でリーチをかける。だが、ハイテイで上家に12000放銃という結果に終わる。そして、次局が対面の一人テンパイで流れた、その次の局で対面が6000オールをツモアガりゲーム終了。結果的にリーチ棒等を含めると、スルーしなかった場合に比べて24pほど損した形。これがどう転ぶかはもう運を天に任せ、結果を待つことに.......。

結果、三位

全ての集計が終わり、入賞者が順にアナウンスされる。結果は三位。一位とはだいぶ離れていたため、アガっていたらやはり足りていなかった。良かった。もしこれで実はアガっていたら優勝だったなんて結果だったら悔しさで発狂するレベル。倒していたら二位だったけど、そしたらそれはそれで絶対後悔していたはずだからこれでよし。

 

全体を通して、とてもいい大会だった。運営もつつがなく行われ、何より参加者の雰囲気がみな和やかだったのが良かった。大会特有の殺伐とした空気が全くなかったため、初心者の方でも絶対に楽しめたはず。また開催される時はぜひ友人や後輩に薦めたいと思う大会だった

白のみなさん、ありがとうございました&お疲れ様でした。

【雀荘レビュー】19番地@新橋

雀荘レビュー第七段は19番地新橋店です。JR新橋駅から徒歩2分ほどの通りに入ったところにあります。

 基本情報

【店名】19番地

【HP】麻雀19番地のプロフィール|Ameba (アメーバ)

【最寄り駅】新橋

【場代】400G。トップ賞200G。

【ルール】

点5東風戦。テンパイ連荘。一本場1500点。鳴き祝儀。60000点終了。トップ30000未満で南入。飛び賞500G。

赤3枚。金2枚(5m・5p)。赤は一枚200G。金は一枚400G

白ポッチ二枚

【雰囲気】

良い。

フレンドリーな接客。客層もルールの割に物腰柔らかな人が多い印象。

【イベント】

19時から先着一名の5勝戦。なんと20000G。破格。

他にもダーツイベントなど。

 

ここがユニーク!:「祝儀ぶんどり合戦」

19番地の一番の特徴は、その祝儀の高さ。鳴き祝儀ありで金を二枚採用しているため、祝儀がガンガン飛び交う。点5なのに800Gオールとかがざらに飛び交う。

通常、点5は祝儀比率が低いため、祝儀よりも順位を意識した方が良い結果になりやすい。しかし、ここではとにかく祝儀を取りにいくべき。金があればガンガンしかけ、テンパイしたら愚形だろうとなんだろうと即リー(白ポッチもあることだし)。天鳳よりもかなり攻めに重点を置いた打ち方が必要。

 

ここで初めて打った時のことは今でも覚えている。5順目ドラドラ両面を即リーしたところ、メンバーが危険牌を切って追っかけをしてきた。数順後メンバーが出アガリしたが、無筋のカン8s待ち1300だった。この選択の是非は置いとくとして、それくらい攻めっ気がいるのだと衝撃を受けた。

結局その日は2-2-1-1の+2300Gだったが、気を抜くとあっという間に沈んでいきそうだった。

また、場代はやや高めだが、その分を五勝戦やイベントで還元している。逆に言えば、ここで浮きたいなら積極的にイベントを狙いにいかないと駄目だろう。

東風戦ということもあり、甘く見ているとピン東南くらいのスピードで溶けていく。しかし、スピード感があってとても面白い店。